令和5年9月13日 記者会見
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1.発言要旨
先ほどの閣議におきまして辞表が取りまとめられましたので、報告を申し上げます。
昨年8月10日に国務大臣を拝命し、1年1か月の間、担当する各政策に全力で取り組んでまいりました。この間、お世話になりました全ての皆様に深く感謝を申し上げます。
私の担当分野は非常に広かったことから多用でございましたが、何とか走り切ることができました。
記者の皆様にも私の担当分野の記事をたくさん書いていただき、感謝を申し上げます。改めてお世話になった全ての皆様にお礼を申し上げたく存じます。ありがとうございました。
全てを申し上げることはできませんが、退任に当たっての所感を申し述べたく存じます。
まず、経済安全保障につきましては、安全保障の裾野が従来の外交・防衛だけではなく経済分野にも拡大する中、国家及び国民の皆様の安全を確保するため、様々な政策に取り組んでまいりました。
「経済安全保障推進法」につきましては、11の特定重要物資の指定や、第一次・第二次の「研究開発ビジョン」における重要技術の決定などを経て、支援の実施に至るまで政策を進めることができました。
加えて、基幹インフラ役務の安定的な提供及び、特許出願の非公開につきましては、政省令の制定・公布といった制度の実施に向けた準備を進め、法執行を軌道に乗せることができました。
また、経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度につきましては、今年2月の総理指示を受け、有識者会議を立ち上げ、今年6月には中間論点整理を取りまとめていただき、具体的な制度設計に向けて関係各省との調整を進めるなど、今後の作業の道筋をつけることができました。
「重要土地等調査法」につきましては、就任来、計219か所の注視区域・特別注視区域を指定し、区域内の土地・建物の利用状況調査に着手しました。機能阻害行為を防止する目的に向けて、着実にプロセスを進めることができたと思っております。
「新しい資本主義」の実現に向けた成長戦略の柱としまして、岸田政権の掲げる「科学技術立国」の実現に向け、科学技術・イノベーション施策の強化に取り組んでまいりました。
具体的には、今年5月に開催されたG7仙台科学技術大臣会合において議長を務め、G7科学技術大臣の共同声明を取りまとめたことでございます。
また、フュージョンエネルギーの実用化に向けた我が国初の国家戦略であります「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」や、量子技術の実用化・産業化に向けた方針となる実行計画を示した「量子未来産業創出戦略」を策定したこともございます。
また、AIをめぐる情勢が非常に流動的である中、幅広い知見を有する有識者の皆様によるAI戦略会議を新たに設置し、「AIに関する暫定的な論点整理」を取りまとめました。
「経済安全保障重要技術育成プログラム(Kプログラム)」の第一次・第二次「研究開発ビジョン」を策定し、本プログラムの最初の研究開発に着手をしましたほか、安全・安心に関するシンクタンクの基本設計を取りまとめ、本格的なシンクタンクの設立準備を進めてまいりました。
また、原子力を取り巻く現状と環境変化を踏まえ、「原子力利用に関する基本的考え方」について本年2月に改定を行い、さらにこれを踏まえたGX脱炭素電源法が本年5月に成立しました。
宇宙システムにつきましては、国力、すなわち外交力・防衛力・経済力・技術力・情報力の基盤でございます。宇宙はますます重要性を増しています。今年6月、「宇宙基本計画」を改訂いたしました。更に、我が国として初めてとなります「宇宙安全保障構想」を策定しました。安全保障と宇宙産業の発展の好循環の実現をアプローチの1つとして位置づけ、安全保障に必要な今後10年の取組を明らかにしました。
スペースデブリ対策につきましては、G7から声を上げようと私から提案をいたしました。今年の5月、G7科学技術大臣会合のコミュニケと広島の首脳サミットの成果文書にスペースデブリ対策が盛り込まれたということは、嬉しく思っております。
また、在任中にH3ロケットの打上げ成功を見届けることができなかったということは残念でございましたが、先日、H-ⅡAロケット47号機の打上げ成功に接することができたのは幸いでございました。
現在開発を進めているH3ロケットとイプシロンSロケットは、我が国の自立性確保と国際競争力強化のために重要で、経済成長や安全保障にも貢献する基幹ロケットでございます。苦戦が続いておりますが、ひるむことなく御努力を続けていらっしゃる御関係の皆様に心から敬意を表し、成功まで応援を続けたいと存じます。
また、健康・医療戦略につきましては、「次世代医療基盤法」の改正に取り組みました。本年5月に無事成立し、健康・医療に関する先端的研究開発や新産業創出を加速するための重要な一歩を踏み出すことができました。
知的財産戦略の推進に関しては、本年6月に「知的財産推進計画2023」を決定し、多様なプレーヤーが、世の中の知的財産の利用価値を最大限に引き出す社会への変革を目指すための10の重点施策を盛り込んだ知的財産戦略を打ち出しました。
大変お世話になり、ありがとうございました。
2.質疑応答
(問)これまで内閣府で様々な施策をされてきたかと思うんですが、事業官庁ではなくて内閣府であったために、他省庁の話は口を出せない等、制約もあったかと思うんですが、内閣府だからこそできなかった部分などについてどのようにお考えになるでしょうか。
(答)科学技術政策にいたしましても主管は文部科学省であり、また経済産業省ほか各省と調整しなきゃいけないことは随分ございます。ただ、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」ですとか、また年次戦略である「統合イノベーション戦略2023」に掲げた政策を各省としっかり調整しながら強力に推進することが重要だと思っております。
特に概算要求のときには、科学技術予算を増やしていこう、宇宙の分野の予算を増やしていこうというようなことで、各省にお集まりをいただき議論をしてまいりましたので、調整役としての務めは果たしてこれたかと思っております。
(問)経済安保の担当大臣として、この1年間で最も印象に残っている取組、また積み残しがありましたら教えてください。
また、一般論で構わないのですが、次の担当大臣に期待することがあれば教えてください。
(答)まず、「経済安全保障推進法」は昨年の5月に成立をいたしましたが、その後、その法律に魂を入れていく、しっかりと運用を始めていくというのが私の仕事であったと思います。
そういう意味では、例えば、サプライチェーンを強靱化するための特定重要物資の政令指定に向けて、9月から各省にサプライチェーン調査もしていただき、12月にまずは11物資の指定をいたしました。補正予算も、1兆300億円を超える、サプライチェーン強靱化のための予算をしっかり確保することができました。今、経済産業省、厚生労働省、国土交通省、農林水産省、ほとんどが経済産業省ですが、それぞれ閣僚の皆様が頑張ってくださっていると思います。
この作業が早く進められたということ、それから重要な研究を民間部門と国で協力して、できるだけ迅速に研究開発を進め、社会実装をしていくという取組にあっても、第一次ビジョン、第二次ビジョンの取りまとめというのは、多くの皆様のお力を借りながら、大変難しい作業であったと思いますが、これも道筋が見え、順次公募が始まり、動き出しております。
積み残しとしましては、やはりセキュリティ・クリアランス、つまり経済・技術版のセキュリティ・クリアランス制度を新たに日本に創設するということでございます。これは法律によってしっかりと制度化していかなければいけませんので、現段階では、ちゃんと法律案が出来上がり成立するまでということを考えますと、積み残し案件であるかと思います。
後任の大臣に期待することでございますが、まずはセキュリティ・クリアランスをしっかり法律案にして、国会での御審議もございますので、取り組んでいただきたいということ。
また、大学ファンドと総合振興パッケージの車の両輪による支援を通じた我が国の大学の研究力の強化はまだ十分なものとはなっておりませんので、大臣のリーダーシップの下でしっかり進めていただくことを期待いたします。
また宇宙ですが、新たに「宇宙技術戦略」を策定しなければなりません。これは大変大きな仕事でございます。この戦略を策定するとともに、これまでJAXAの研究開発力に重きが置かれてまいりましたが、JAXAの研究開発力もさらに強めていただくとともに、JAXAから企業や大学への資金供給機能を強化することは、とても大きな課題だと思いますので、期待をいたしております。
しゃべり始めるととてもたくさんあるのですが、大きな積み残し課題、また次に期待することということで申し上げました。