令和5年8月1日 記者会見
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1.発言要旨
経済安全保障担当大臣として、経済安全保障推進法の関係で御報告を申し上げます。
本日、「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。
この政令におきまして、「基幹インフラ役務の安定的な提供の確保」の制度の関係では、制度の対象として指定可能な事業者と事業の範囲として、推進法で定めた電気・ガス・水道など14事業のうち、役務の安定的な提供に支障が生じた場合に、国家及び国民の安全を損なう事態が生ずるおそれがあるものを、「特定社会基盤事業」として定めております。
また、「特許出願の非公開」の制度の関係では、非公開とすべきか否かの審査の対象となる、国家及び国民の安全を損なう事態が生じるおそれが大きい発明が含まれ得る技術の分野を、「特定技術分野」として定めますとともに、非公開とした場合に産業の発達に及ぼす影響が大きいと認められる技術の分野、及びそのような技術の分野であっても審査に付すべき発明の要件を定めております。
基幹インフラ、特許出願の非公開のいずれにつきましても、令和6年春頃の制度運用開始に向けて、関係事業者や産業界の皆様に向けた制度の周知広報を行いながら、引き続き準備を進めてまいります。
2.質疑応答
(問)本日、Kプログラムのプログラム会議が開かれると思いますが、一部の報道では、「第二次研究開発ビジョン」に23の技術を盛り込むとあります。その事実関係と、大臣としては、どういう技術が入ってほしいのか、またいつ頃決定できそうなのか、教えてください。
(答)Kプログラムにつきましては、令和4年度第二次補正予算で2,500億円が追加措置されましたので、この予算を最大限活用する観点から、本プログラムで支援すべき経済安全保障上重要な技術について、鋭意検討を進めているところでございます。
「「特定重要」23技術追加」の報道は承知しておりますが、現時点で個別の報道に対してコメントすることは差し控えさせていただきます。
本日のプログラム会議での議論も含めて、「第二次研究開発ビジョン」の案を取りまとめてまいります。
本日のプログラム会議は午後からでございますが、有識者の皆様を交えて、次の研究開発ビジョン策定に向けた意見交換を行うことにいたしております。
いつ頃の決定かということですが、現時点で明確にお答えするのは困難ですけれども、本日のプログラム会議での御議論を踏まえて、可及的速やかに決定するべく取り組んでまいります。
技術でございますが、これも本日、プログラム会議が終了した後に内閣府ホームページで公開を予定しておりますけれども、今、非常に目まぐるしく経済安全保障の環境が変化を続けております。特に、サイバー空間領域、エネルギー・材料・製造技術などの横断領域、バイオ領域に関する取組は強化していけると良いと思っております。
(問)このところ光量子コンピューターに関する研究成果発表が相次ぎました。理研は技術的なブレークスルー、東大は試作機の開発だったと思いますが、大臣はどのように受け止められたでしょうか。また、政府としてどのように支援していくのか、お考えがあれば教えてください。
(答)良いニュースだったと思います。量子コンピューターの実用化や産業化につきましては、今年4月に策定しました「量子未来産業創出戦略」において、量子コンピューターの技術開発の強化・加速とともに、産業界を含めて幅広く利用を進めるということにしております。
今般、理化学研究所や東京大学の研究チームが、光量子コンピューターにおいて、これまで課題になっていた「掛け算」を可能としたこと、また「連続した3個の光パルス」で計算を可能にしたことなど、実用化を目指す量子コンピューターにおいては、重要な一歩になったと思っております。
この光量子方式につきましては、「ムーンショット型研究開発制度」を中心に、国のプロジェクトによって研究開発を推進しております。
とりわけ量子コンピューターは、低消費電力ということ、また高速計算ということで、私も非常に期待をいたしておりますので、今後も関係府省庁・関係機関と連携しながら、量子コンピューターの実用化・産業化に向けた研究開発は強力に支援してまいりたいと思っております。
(問)今月で大臣、担当相に就任されて1年となります。経済安全保障分野での実績などで、これまでの1年間はいかがだったかという所感と、またセキュリティ・クリアランスなど課題も残っておりますが、今後の目標、あるいは閣僚人事などの話も出ておりますが、続投等の意気込みがあればお伺いしたいと思います。
(答)早いもので、昨年8月10日に就任してから1年近くになります。
経済安全保障推進法が昨年5月に成立しまして、8月に2つの新しい制度が施行され、そしてまた今年の4月に別途、新しい2つの制度の一部が施行され、私の仕事は、その成立した法律に魂を入れていく、細かい決め事をしっかりとしていく、といったことでございましたので、有識者会議の先生方にも大変お世話になりましたし、職員にも苦労していただきましたが、経済安全保障推進法は当初予定していたよりも速いペースで施策が動き出していると思っております。
また、私としましては、やはりエネルギー安全保障に非常に強い思いがございましたので、日本初の「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定できたこと、またこれも日本初となりますが、「宇宙安全保障構想」を策定できたこと、そしてまた、これは世界的な課題ですが、G7科学技術大臣会合の議題の中にスペースデブリ対策を入れ込むことができ、それがまた首脳宣言にも反映されたことは、とてもうれしく思っております。
残る課題もいくつかございます。
1つは、やはり産業技術版のセキュリティ・クリアランス制度。これは法律を作らなければいけませんので、しっかりと仕上げなければいけないということ、これは日本の国際競争力に大きく影響する分野でございます。
また、先般、国立研究開発法人からの情報流出事案がございましたけれども、これらも国立研究開発法人・大学・大学院と対象は広くなりますけれども、令和3年に決めた「研究インテグリティに関する対応方針」を徹底的に皆様にもう一回見直していただいて、対応を強化していただくといった取組もございます。
閣僚人事は、先般も申し上げましたが、総理の専権事項でございますので、今は岸田内閣が一つでも多く実績を挙げていけるように、私は私の持ち場で頑張っているということでございます。
(問)大臣としてこの1年間、重要政策の立案や通常国会の長時間の国会答弁に従事されておりました。一方で政務では、奈良県知事選の対応や、各都道府県に赴いて講演等を幅広に行われていることと承知しています。この1年間、大臣としての公務と政務を両立する上で得られた相乗効果や課題について伺います。
(答)国会会期中は国会対応もさせていただきながら、またこの役所の中におきましては法制度を前に進めていくための取組もしながら、さらには全国各地、お呼びいただきましたら講演にも伺っております。主に週末、土曜日・日曜日や、昨日は午後遅くから愛知県に行ってまいりました。
そんな中で、主に講演の内容は、経済安全保障推進法そのものの内容はどういうものなのか、意外と御存じない方も多くございますので、経済安全保障というのはこういう意義があって、こういう取組が進んでいますということや、私の悲願でありますセキュリティ・クリアランス制度がなぜ重要なのか、必要なのかということを、経営者の方々が多くおられるような会合でお話をしてまいりました。
そしてまた、科学技術政策に関しても、例えば、エネルギー安全保障について政府の方針、そしてその必要性。
それから、宇宙政策にお金を使うことは、納税者の方からしたら、ちょっと自分たちの生活とかけ離れたものではないかという感触をお持ちのようでございましたので、スペースデブリ対策、また災害が起きたときの情報収集に資する合成開口レーダーを搭載した衛星の必要性など、それから災害のとき、また運悪く国際紛争という状況になったときに、情報通信の継続性が私たちの命を守ることになるのだといった、宇宙の話などもしてまいりました。
先週、都内で行った講演でも、非常に長い質疑応答時間を取りました。そんな中で、実際に経済の第一線におられる方々からのお声もいただいております。
また、地方に出ましたときには、地方の独自でお困りのことについて、講演の前に地方公共団体の長の方々や地方議員の方と意見交換なども入れてまいりました。
そういった意味では、いろいろな国民の皆様、特に納税者の皆様のお声をしっかり受け止めながら必要なものを政策に生かしていく、そして特に御理解を深めていただく、そういうよい機会になっていると思います。
(問)1週間ほど前、自民党の萩生田政調会長が、政府が保有するNTT株の売却について本格的に検討を始めると表明しました。
経済安全保障の観点から慎重に議論するべきという意見もありますが、現在の経済安全保障担当大臣であり、過去に総務大臣も御経験されていますが、御意見を伺いたいです。
(答)萩生田政調会長の御発言ですが、党内の会合におけるものですから、詳細を把握しておらず、国務大臣としてお答えすべきものでもないと思っております。
ただ、自民党の中で防衛関係費の財源検討に関する特命委員会でも議論が行われて、「今後、NTT完全民営化の選択肢も含め、NTT法の在り方について経済安全保障にも配慮しつつ、速やかに検討すべき」ということになったと伺っております。経済安全保障の観点をしっかり党のほうでも持っていただいていることについては、ありがたいと思っております。
株の売却の是非については申し上げませんけれども、政府が3分の1以上保有しているものを売りに出した場合に、仮にですけれども、懸念国にそれを買い上げられてしまったり、また今NTTでは、経済安全保障にも関係の深い機微な研究開発もしていただいておりますので、この辺りの観点もしっかり踏まえた上で議論が進められることを期待いたしております。
(問)自民党の女性局の国会議員が、フランス視察の際の写真をSNSに公開して物議を醸しています。SNSの使い方等の問題について、批判の声が上がっているようですが、大臣としての受け止めを教えていただけないでしょうか。
(答)その話を夕べまで知らなかったものですから、詳細を把握していません。
ただ、これは自民党女性局の視察でございますし、党務の活動でございますので、今、大臣記者会見の場でコメントできるものではないと思っております。
(問)Kプログラムについて、一次のときは、研究開発主体がその情報をオープンにする、クローズにするという情報管理や境界決めなどを検討する協議会の場を設けて戦略を立ててやっていこう、というのをいただきましたが、協議会を作るのが遅れて、研究主体もどうしたのかと言っていたところがあります。二次では、協議会とプロジェクト組成のつなぎ目のところをどう後押ししていくか、協議会をどうスムーズにつくっていくのか、改めていただきたいです。
(答)しっかりとその体制を整えてまいりたいと思います。
本日、プログラム会議が終わりましたら、事務方から皆様方に御説明をさせていただきます。
今後、ずっと進めていく上で、まだシンクタンクの案件や、私たちが検討し実行していかなければいけない様々な問題が残っておりますので、頑張ってまいります。
(問)セキュリティ・クリアランスの関連で、有識者会議の議論等がまた秋から本格化してくると思いますが、今後の法体系の在り方について、特定秘密保護法の改正という報道もございますが、大臣のお考えがあれば、よろしくお願いします。
(答)経済安全保障に関するセキュリティ・クリアランス制度の創設に関しまして、私自身の考え方としましては、特定秘密保護法で対応することを考えておりません。経済安全保障推進法に新たな章立てをしたいと思っております。
ただし、特定秘密保護法と全く関係ないかといえば、そうではなくて、例えばポータビリティの問題がございますので、特定秘密保護法に基づく外交、防衛、スパイ、テロといった分野で、既にクリアランスを持っていらっしゃる方が、役所内の人事異動などでクリアランスを失い、また元の部局に戻ったらクリアランスの調査を受けなければいけない、ということはあまり合理的ではないので、この辺りは改善点かと思っております。
ただ、制度の創設そのものを特定秘密保護法をメインにしてやるかといえば、そういったことは決まっておりません。