高市早苗政調会長 公約発表記者会見 令和4年6月16日
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【冒頭発言】
(木原事務局長)
ただ今から、第26回参議院議員通常選挙、自由民主党選挙公約発表記者会見を開会させていただきます。私は、本日の進行を務めます、自由民主党政務調査会副会長・事務局長の木原稔です。宜しくお願い致します。
早速ですが、高市政調会長より、選挙公約の概要について説明をお願いします。
(高市政調会長)
6月9日の政調審議会及び臨時総務会において、参議院選挙の選挙公約が了承され、全体的なデザイン等の作業も進みました。昨日、通常国会が閉会したというタイミングですので、改めて皆様に説明をさせていただきます。
それでは、まず、参院選公約をご覧ください。今回の公約をご覧になって、お気づきになられたかと存じますが、昨年の衆院選の政権公約と比べて、非常にコンパクトになっております。
昨年の衆院選が10月31日。8ヶ月経っていません。選挙後に会期の短い特別国会、臨時国会があったとはいえ、通常国会も本予算の編成も1回しか行っていない状況であり、政権公約の実現は、今なお、現在進行中でありますし、政策の方向性についても、大きな軌道修正はございません。
本来、政権選択選挙である衆院選の政権公約は、「次の衆院選挙までにこれをやっていきます」という、国民の皆様へのお約束でございます。
今回の選挙公約をご覧になって、「政策BANKがないので、自民党は、あそこに書かれていたことはやめてしまったのではないか」と、思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、昨年、政策BANKに書いたことについては、間違いなく、今後もしっかりと取り組んでまいります。
その上で、今回の選挙公約については、「この参議院選挙の時点で、特に国民の皆様に訴えたいこと」、「是非、ここをご覧になって、投票行動を決めていただきたいというポイント」に絞って、コンパクトかつメッセージ性が高いものにしよう、という方針で、作業を進めてまいりました。
まず、表紙をご覧ください。表紙には、従来、広報本部が決定する「党全体のキャッチコピー」を掲載しております。今回は、「決断と実行」という部分が、それにあたります。
ただ、公約を作るにあたってコンセプトがあった方が、国民の皆様へのメッセージ性が高まると考え、政調会の内で議論した結果、「日本を守る。未来を創る。」という視点から、公約づくりを進めることし、表紙にもサブタイトル的に入れることにいたしました。
政策そのものに大きな変更はないとはいえ、内外の情勢は目まぐるしく変化をしてきております。
ただでさえ、コロナ禍の影響が収まらない中、原油価格の上昇は昨年の暮れから徐々に始まっております。今年2月にはロシアによるウクライナ侵略と、それに伴う経済制裁、更には急激な円安などが重なり、原油高・物価高で国民の皆様の暮らしや、様々な経済活動が影響を受けています。
また、北朝鮮は、今年に入って既に17回ミサイルを発射しており、その回数と言い、少なくとも28発という弾道ミサイルの数と言い、わが国にとっての脅威が、非常に高まっております。
何が政治の使命かと言いますと、国民の皆様の生命と財産、暮らしを、様々な脅威、そしてリスクから守ること以上の使命はございません。「日本を守る。」という言葉には、国民の皆様が様々な不安を抱えておられる中、まずは「守るべきものをしっかり守る」という姿勢と決意を込めさせていただきました。
そして、もう一つのコンセプトとして、「未来を創る。」ということを掲げております。
守るべきものを守ったうえで、岸田総裁が掲げる「新しい資本主義」や「デジタル田園都市国家構想」などを通じて、「力強い成長軌道」、「人にやさしい、安心して暮らせる社会」、「活力ある地方」を創る、「憲法改正」によって「新しい国のかたち」を創るといった形で、「未来志向の旗」も掲げております。
以下、順を追って説明をさせていただきます。
表紙をおめくりいただくと、最初の見開きで、岸田総裁のメッセージを掲載しています。現状についての認識に続き、国民の皆様お一人おひとりの不安に寄り添う姿勢、直面する壁を乗り越え続け、「決断と実行」で、国民の皆様の暮らしを必ず守り抜くとの決意が込められております。
続いて3ページ目をご覧ください。ここからが公約の本文となります。最初の柱は「毅然とした外交・安全保障で、“日本”を守る」です。
各社の世論調査を拝見しますと、「優先的に取り組んでほしい政策」では、以前から「社会保障」や「経済」が上位に来ていますけれども、この数カ月、「外交・安全保障」がこれまでになく、大きく伸びております。調査によっては7割を超えています。
また、4月4日に、全国政調会長会議を開催いたしました。各都道府県連の政調会長から、公約づくりに関する意見を伺ったのですが、「外交・安保」に関する意見が突出して多く寄せられました。
更に、連日のニュースがウクライナ情勢から始まる、あるいは多くの時間が割かれることを考えましても、「外交・安保」をトップにもってくることが、国民の皆様の関心の方向性にかなったものであり、かつ、自民党らしさを打ち出せるものだと考えました。
具体的な内容としては、4ページ目に記載しております。外交面では「ウクライナ問題への対応」をはじめ「国際秩序の維持発展にわが国が主体的な役割を果たすという姿勢」、「自由で公正な経済秩序の構築」などを掲げるほか、「国連改革」なども盛り込んでおります。
防衛関連では、「国家安全保障戦略」の改訂、新たな「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の策定に触れたほか、防衛費については、「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」との姿勢を示しました。
更に、「弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力の保有」、「防衛生産・技術基盤の維持・強化」も盛り込みました。併せて、このページでは、尖閣諸島周辺をはじめとする「海上保安体制の強化」に触れたほか、「経済安全保障上、重要な物資のサプライチェーン強靱化」や、「先端技術開発の支援の抜本強化」といった「経済安全保障」にも触れております。
続いて5ページからは、2つ目の柱として、「徹底した原油高・物価高対策で、国民の生活と産業を守る」という姿勢を打ち出しました。
ウクライナ情勢や原油価格の上昇、急激な円安などによって、様々な生活物資、原材料等の価格が上昇したことを受け、政府は4月に「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を決定しました。
この対策によって、ガソリン価格の値上がりは欧米より2割近く低く抑えられておりますし、ウクライナ情勢が緊迫化した2月以降の物価上昇も、米国など、他の主要国と比べて、日本は4分の1程度に収まっています。
もちろん、原油価格も為替も変動するものですから油断はできませんが、自民党としては、今後も「総合緊急対策」を着実に実行するとともに、後にも触れる「人への投資促進」で25年ぶりの本格的な賃金増時代を創るなど、強力で機動的な原油高・物価高対策を進めてまいります。
具体的には、6ページに記載している通り、引き続き燃油価格の激変緩和措置を行います。
1兆円の地方創生臨時交付金を活用して、生活や事業者への支援や、給食費負担軽減などを実施いたします。また、国民生活や産業に不可欠な食料、物資、原材料、エネルギーの安定供給を図るため、サプライチェーンの強靱化も進めてまいります。
更に、労務費や原材料費、エネルギーコスト等の上昇で苦労されている中小企業の皆様をお支えするために、取引価格の転嫁対策にもしっかり取り組んでまいります。
併せて、引き続き、資金繰り支援に取り組むとともに、過剰債務の軽減を含めた事業再生支援も行ってまいります。
次のページをお開き下さい。「守る」の3つ目は、「災害対策」です。
近年、大規模地震や豪雨・竜巻などの自然災害が多数、発生しています。7ページのリードにも書きました通り、地震や台風、竜巻の発生そのものを人間の力ではどうすることもできないだけに、国民の皆様にとって、災害対策は最も切実な課題であろうと考えております。
ただ、平時からの備えによりまして、被害を未然に、あるいは最小限に防ぐことは可能でございます。そうした対策によって、国民の皆様の生命・財産・暮らしを守りたいと考えております。
具体的には8ページ目に列記いたしました。まずは、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を着実に実施するとともに、加速化対策後も、中長期的かつ明確な計画の下、必要・十分な予算を確保し、継続的・安定的に取組みが進められるよう努めてまいります。
防災の面でも、最先端技術の活用は有効でございます。データを駆使して線状降水帯等の予測精度を向上させたり、デジタル化による情報提供、消防本部へのドローンの配備などを進めたりすることによって、防災力の充実・強化に取り組みます。
もちろん、東日本大震災をはじめ、大規模地震や風水害等で被災された方々への支援、復旧・復興にも全力で取り組んでまいります。
そして「守る」の最後が「感染症対策」です。
昨今の感染状況や、世論調査等の結果を踏まえ、「感染症対策と社会・経済活動の両立」を目指す姿勢を打ち出すとともに、引き続き、ダメージを受けておられる方々や事業者を支援していく姿勢も示させて頂きました。
具体的には、10ページにお示ししたように、引き続き、「ワクチン接種の推進、検査能力の拡充」、「医療体制の強化」、「国産の飲み薬をはじめとする治療薬や国産ワクチンの確保」を進めていくとともに、コロナ禍で傷んだ暮らしを支えるための資金繰り対策や、様々な補助金を活用した支援事業を行います。
深刻な影響が続く地域交通・航空などの事業の継続・再生、観光の需要喚起や高付加価値化等の支援も強力に進めてまいります。
また、新型コロナへの対応ばかりでなく、将来発生し得る新たな感染症への備えも必要です。このような視点から、将来の危機に備えた司令塔機能の強化にも取り組んでまいります。
続いて、11ページ目から「未来を創る。」のコーナーに入ります。
その1つ目の柱が、「新しい資本主義」です。ここで大事なのは、ただ「経済を成長させる」ことだけではなく、「国民の皆様に、豊かさを実感していただくこと」です。
11ページ目から14ページ目までの2つの見開きが「力強い成長軌道を創る」ための施策です。人への投資を大胆に進めるとともに、「わが国の勝ち筋」である先端科学技術、例えば量子、AI、バイオ、グリーン、宇宙、海洋、再生医療などについても、大胆な投資を行い、社会実装を進めることで、官民を挙げて科学技術立国を実現し、「世界をリードする日本」を創ってまいります。
また、スタートアップ・企業への支援を拡充するとともに、脱炭素、デジタル化の取組みを、さらに推進していきます。特に脱炭素については、長年、経済成長の足枷のように見られてきましたが、いまや成長の起爆剤となっており、今後10年で150兆円超の官民投資を実現したいと考えております。
また、経済成長を図るうえで、女性活躍の余地はまだまだ大きく残っています。女性が自ら希望する仕事にチャレンジし、大いに活躍できるよう、人材育成の施策も用意しつつ、環境整備を進めてまいります。
なお、「新しい資本主義」につきましては、よく「どういうものか分かりにくい」とか、「イメージがわかない」といったご指摘を受けております。そうした方々への、一つのメッセージとして、12ページ下段に「新しい資本主義とはどういうものか」に関するコラムも入れさせていただきました。
15ページからは、「人にやさしい、安心して暮らせる社会を創る」とあるように、いわゆる「分配」に重心を置いた施策を盛り込んでおります。
まずは、「全ての世代が安心できる持続可能な年金・医療・介護などの全世代型社会保障の構築」など、社会保障全般に関する事項を記載しました。そして、「少子化対策・子育て支援」、更には「孤独・孤立」や「引きこもり」に悩む方々への支援、自殺対策といった「不安に寄り添い、一人ひとりの幸せを支える施策」を記載しております。
16ページでは、「犯罪や様々な危険から国民を守る」ための取組みについて盛り込ませていただいております。
特殊詐欺やストーカー、DV、性犯罪、児童虐待、サイバー事案、更にはあおり運転など、国民を取り巻く「危険」の形も多様化してきています。更に言えば、先般の「北海道知床の遊覧船事故」で明らかになったような課題もございます。それら一つひとつの危険を摘み取るように、あらゆる手立てを尽くし、「世界一安全・安心な日本」を実現してまいります。
なお、参議院自民党では、数年前から「国民の不安に寄り添い、支える」ための取組みを続けてきています。有識者からのヒアリングだけではなく、しばしば現場にも足を運んで、不安の声をじかに聴き取り、政策化するという取組みです。16ページでは、そのような取組みについても、コラムという形でご紹介させていただいております。
続いて、17ページをご覧ください。
ここから20ページまでの2つの見開きでは、「活力ある地方」を創るための施策を取り上げております。18ページでは、総理が掲げる「デジタル田園都市国家構想」に関する、個別の施策を列記しました。ここにも、3つ目のコラムとして「デジタル田園都市国家構想」が目指す社会の絵姿を記載させていただきました。
続いて19ページでは、「地方創生」の取組みをはじめ、地方で年々深刻化している「インフラ整備・老朽化対策」、「持続可能性と利便性の高い地域公共交通」、そして「中小企業、地域経済の活性化」などにも触れております。
20ページ目では、「農林水産業」の関連施策を取り上げました。「農林水産業」は、もはや単なる産業、生業ではなく、食料安全保障という視点からも非常に重要な位置を占めております。同時に農林水産業は「成長産業」としても、まだまだ大きな伸びしろがあります。輸出の拡大についても、引き続き取り組んでまいります。
また、沖縄振興についても、地方活性化の柱の中で扱わせていただきました。復帰50年を迎えた沖縄が、日本経済成長の牽引役となるよう、沖縄振興を国家戦略として構築し、「強い沖縄経済」を実現していきます。
地方に関する政策といいますと、これまで、ともすると「都市と地方」の対立の構図で語られることが多かったように思いますが、私達の発想は、そのようなものではありません。
デジタル技術の進歩は、都市と地方との関係にも大きな変化を及ぼそうとしています。今や、日本中どこに住んでいても、安全かつ便利に生活ができ、必要な医療・福祉や高度な教育を受けること、働くことが、可能になりつつあります。もちろん、地方と世界が直接つながることも可能になっております。
都市と地方がWin-Winの関係で結びつくことにより、「日本全体の活力」を創り出す。そのようなイメージで、地方の振興策を進めてまいりたいと考えております。
そして21ページ目、この選挙公約の大トリが「憲法改正」でございます。
22ページには、憲法改正に関する自民党の考え方をお示しするとともに、その実現に向けた決意を改めて記しております。
併せて、「新しい国の形を創る」との文脈で、行政改革、更には党改革に取り組む姿勢も打ち出しています。
以上が、今般の選挙公約の概要でございます。
ご清聴ありがとうございました。
【質疑応答】
Q:参議院選挙での主な争点は何か。公約の浸透・支持拡大に向けてどう取り組むか。(NHK)
A:選挙の争点というのは、有権者の方お一人お一人がお決めになるものだろうと、私は考えております。自民党として、あえて争点を一つ挙げるということでしたら、それは最初に書かせていただいた、「外交・安全保障」になると思います。
国の守りが万全でなければ、日本という国家も、国民の生活も、日本経済も、存立しなくなってしまいますので、やはり現在は、国民の皆様の命、そして国土をしっかりと守り抜けるような体制をつくっていく、そういう決意が、全ての政党に求められているのではないか、と考えております。
この選挙公約集というのは、法律上、選挙事務所もしくは候補者の傍でしか配れませんので、お配りできる数は限られます。
しかしながら、政策パンフレットを活用したり、また、それぞれ地域で活動されている皆様が、この公約の中からこれを訴えたいということを選んでいただいて、お披露目いただくことが何よりだと思います。
Q:防衛費について、野党は総額ありきではないと主張し、メリハリのある防衛予算を掲げているが、あえてGDP2%を掲げた意図や考えは?(時事通信)
A:総額ありきではなく、メリハリのある予算というのは、言うまでもない事だと考えております。
防衛費の規模というのは、どのような状況においても、国民の皆様の命、そして国土を絶対に守り抜くという、国家としての固い決意を示すものでございます。他の予算と決定的に違うのは、他の国や地域への強いメッセージになる、ということでございます。
自民党は、日本を虎視眈々と狙う国・地域の指導者たちの意思決定にストレートに響く言葉を使うということです。それゆえに、「2%以上も念頭」でありまして、「来年度から5年以内」でありまして、そして「抜本的強化」でございます。
Q:昨年衆院選の公約では冒頭にコロナ対策があったが、外交・安保を持ってきた狙いは?(日経新聞)
A:コロナ対策を軽んじているわけではございません。「守る。」のコーナーの大トリとして、提示をさせていただいております。「創る。」の締めのコーナーは憲法でございますので、そこはご理解を頂きたいと思います。
コロナ感染症対策も、決して油断できる状況ではございません。新しい株が出て来たり、様々なリスクが想定されます。ただ、現状におきましては、一定の落ち着きを見せておりますので、しっかりと感染症対策を取った上で、社会経済活動と両立をさせていくということだと考えております。
日本の国民の皆様の命や領土を守れない、そして主権そのものを守れないということになると、経済も何もありません。ですので、やはり外交・安全保障が、日本の経済成長をこれから保障していく上でも重要なことだと考えましたし、自民党にしかできない打ち出しだと思っております。
Q:25年ぶりの賃金増時代を目指すとあるが、掲げた政策で十分か。また、企業主体の賃上げで、所得の分配は実現できるか。(北海道新聞)
A:これまで、抜本的に、かなり強力な賃上げ税制を実施してきております。実際に賃上げの成果も出始めております。この点は多くの皆様にご理解いただけると思います。大企業だけではなく、中小企業も、今年の春闘の結果を見ましたらお分かりいただけますように、賃上げムードに入ってきております。
メニューとして十分かどうかということですけれども、今後状況を見ながら、さらに強い対策が必要だということになりましたら、それは検討しなければなりません。
常に私達は、まず賃上げがあって、そして消費マインドが改善する、消費が増えますと、企業収益も上がってくる、そしてまたお給料が上がって、賃上げにという良き循環を目指しております。賃上げの状況については、十分に注視していかなければいけませんし、さらなる対策が必要な場合は躊躇いたしません。
また、企業任せということにはなっていないと思います。例えば最低賃金でしたら、これは政労使の厚労省の最低賃金審査会で決定されることでございますし、私達は、まずは全ての都道府県で最低賃金が1000円以上には絶対なってほしい。そのために経済を良くしていかなきゃいけない。そういう強い思いを持っております。
(木原事務局長)
一つ補足をさせていただきます。最低賃金については、政府と党は連携を取りながら、政労使で協力をしながら、過去9年で181円引き上げてきたところでございます。
やはり、最低賃金を引き上げるということは、企業側にとっては負担ということもありますので、引き続き、中小企業あるいは小規模事業者の生産性向上、そして価格転嫁等の取引条件の改善、そういった取組みも並行して全力で進めてきます。かつ、地域間格差にも配慮しながら、できる限り早期に対策をしていくという趣旨でございます。
Q:ウクライナの状況を踏まえ、改憲の重要性についてお考えは。また、憲法について岸田総裁は遊説でどう触れるのか。(産経新聞)
A:せっかく憲法改正実現本部長が同席しておりますので、冒頭に私から話をした後、お話をしていただきますけれども、私どもは改正のたたき台としては、4項目を提示しております。今、全国各地で古屋憲法改正実現本部長の指示により、憲法改正について様々な集会を開いています。私も講師として伺いましたら、非常に関心が高くなっている。これはやはり、命をかけて国を守っている自衛隊を明記するということに対して、賛成だというご意見も多数でございますし、やはり去年からコロナ禍ですとか、サプライチェーンの脆弱性によってつらい思いをしましたので、緊急事態条項に対する関心も非常に高くなってきていると思います。
しかしながら、この4項目に限らず、自民党が一番最後に発表したのは平成24年でございましたが、前文から全条文を取り揃えた憲法改正の案を国民の皆様にお示ししております。そこでわかっていただけるとは思うのですが、憲法が制定された当時と今では、技術革新もあって、全然環境が変わっています。
例えば、現在の憲法が制定されたときには、インターネットというものはございませんでした。そして、自民党の安全保障調査会からも提言がありましたが、アクティブサイバーディフェンスということを本気でやっていこうと思うと、例えば憲法の中に通信の秘密というものがございまして、電気通信事業法がこれに基づいて作られています。通信の秘密というものを国防も含めて、厳密に守らなければいけないというと、平時から敵性サイバー空間の脅威を探知することは、ほぼ不可能になってまいります。
サイバー空間上での反撃ということも、現在の憲法の中でどのようにとらえるのか。不正アクセス禁止法もございます。許可なく相手の通信設備などに入れないということになりますと、なかなか国防上も厳しい問題が出てきます。
この技術革新の状況ですとか、日本の国内外を取り巻く環境、これも戦争に負けて今の憲法が出来た時と、今の日本を取り巻く状況とはずいぶん変わってきています。
中国・ロシア・北朝鮮の3方面に対するかなり厳しい備えをしなければいけない状況についても、高い関心を示していただいていると考えております。
といっても、「憲法は国民のもの」でございます。ところが、帝国憲法も現在の日本国憲法も、一度も国民投票がなされていません。国民の皆様にご判断を頂いていないということで、国民投票が実現して初めて、「憲法は国民のもの」になると私は思っております。期待をしております。
遊説についてはわかりません。
(木原事務局長)
古屋憲法改正実現本部長から補足があればお願いします。
(古屋政調会長代行・憲法改正実現本部長)
ほぼ政調会長が言っていただいた通りです。まず、大切なことは、憲法改正ができるのは国民の皆様です。ところが、今は、その国民の皆様が憲法改正に賛成か反対か、主体的に意思表示できる機会を奪っている状況です。
だからこそ、主戦場は衆参の憲法審査会です。そこの中で良い議論をできるように、フォローアップしていくのが、憲法改正実現本部であると考えており、徹底的にやっております。すでに、今、2月から始めて270会場で集会をやっています。
もう一つの遊説についてですが、実は総裁は公の場で、「先人が75年間挑戦してきて、憲法改正ができなかった。私の代でぜひそれにチャレンジしたい」と公言しています。昨日の記者会見でも、憲法改正についての意欲を示されていますので、自由民主党総裁として、選挙の中でそういう演説をされるということは、あって当然であると考えております。
Q:6年前の公約にあった、GDP600兆円の記述が無いが、撤回するのか。最低賃金1000円についても記述がなくなったが、目標はどうなるか。防衛や子育て対策の財源についてどう考えているか。(東京新聞)
A:まずGDP600兆円規模でございますけども、6年前と今年では経済状況に大きな変化がございます。名目GDPを見ましても、アベノミクスの成果が着実に出て、令和元年度は550兆円ということでしたけれども、その後のコロナウイルスの感染拡大とともに伸びは止まってきております。
ですから、感染防止対策と社会経済活動のバランスをしっかりとりながら、昨年11月の総合経済対策と、過去最高となりました令和4年度予算107兆6000億円、そして4月末の「原油価格・物価高騰総合緊急対策」、これを着実に実行して、再度、GDP600兆円に向けて、経済活動はしっかりと支えていきたいと考えております。
それから最低賃金の具体額ですけれども、引き上げ額につきましては、先ほど申し上げましたように、政労使の三者構成の最低賃金審議会で、生計費ですとか賃金支払い能力といったものを考慮して、しっかりと議論していただくものでございます。そうした中で最低賃金の引き上げを図って、私達はできる限り早期に全国加重平均が1000円以上となることを目指しております。
それから、防衛政策、また、子育て支援策についてもお金がかかってまいります。こと防衛に関しましては、あくまでも積み上げで金額が決まるもの、それから、発注したから直ぐに新しい装備品が出来てくるわけではございませんので、一挙に例えば、対GDP比2%という水準に達するようなものではありませんけれども、今足りないものについては着実に増やさなければいけないということでございます。
例えば、「新しい戦い方」と言われます「宇宙・電磁波・サイバー」といった分野もそうですし、無人化・無人機というものも、これから必要になってまいりましょう。それから継戦能力ですね。もしも攻撃を受けた場合、何日間持ちこたえられるのかということを考えますと、今の弾薬のストックということを考えますと、1週間もたないだろうと言われていますから、やはりそういった備蓄分も含めて、しっかりと継戦能力を確保しなければなりませんし、様々な課題があります。防衛費に関しましては、兆単位で増えますので、最初はやはり国債発行になるのだろうと思います。
ただ、私どもの考え方は、防衛費も大事、子育て支援も大事、ご高齢の方が健康で長生きに幸せに暮らしているということもとっても大事ですから、防衛費を増やすから何かをぐっと削るという考え方ではなく、先日来申し上げていますように、経済成長で確保していきたいと思っております。経済のパイそのものは大きくしていかなければなりませんし、そこのところをとても大事に考えています。
防衛費を増やしたから、本当に必要な社会保障費を削るということではございませんし、社会保障の財源も、現在、消費税によって安定的に確保されておりますので、ここのところは、大切に考えていきたいと思います。
Q:被選挙権の年齢引き下げについて、各党触れており、自民党は今回記述が無かったが、会長のお考えは。また、今日10増10減を巡る区割り審の勧告があるが、今後、党内調整についてどのように行うべきか。(朝日新聞)
A:被選挙権の引き下げについては、今回の公約の中では触れておりません。現在の党内の議論の状況については、事務局長から説明をさせます。
(木原事務局長)
説明の冒頭で申し上げましたけれども、今回の参議院選挙では「選挙公約」といっていますが、衆議院選挙の場合では「政権公約」といっており、そして、政策BANKというものを付けてお配りしております。
この政策BANKというものは、政権選択選挙でお配りしたものですから、今回ここでは書いていないけれども、衆議院選挙でお約束したことはずっと生きているということから言うと、被選挙権の引き下げについては、継続してずっと党内で議論しているという位置づけにさせていただいております。この部分は青年局を中心に議論はずっと続いているという状況です。
(高市政調会長)
それから、今回、公約集を薄くといいうご希望が参議院の方から寄せられました。暑い中での選挙戦ですから、配布するのも重いものではないように、シンプルに薄くということでございました。
インターネット上ではございますが、Jファイルについては、かなり充実をいたしました。現在、自民党の中で議論されている本当に多様な課題、各職域団体の皆様などがご興味を示される課題について、書かせていただいております。当然、議論がまだ続いていて、結論が出てないものも両論併記で書かせていただいております。
それから区割りの問題でございますが、区割り審の結果を受けて、今年の秋以降に法律案の形で出てきたら、その段階でしっかりと審査をさせていただくということになろうかと思います。
Q:まん延防止等重点措置による協力金は、適用される地域と適用外の地域との間に不公平があるとの声もあったが、協力金について今後はどうあるべきか。また、私権制限についての考え方は。(読売新聞)
A:これは非常に難しい話なのですが、これまで地域によって差があったということは否めないと思います。それぞれの地方公共団体において、感染状況を見ながら判断をされて、必要な対策を打ってこられて、それを国が応援するということになっておりました。これからもそれは変わらないと思っております。
ただし、今の新型コロナウイルスやインフルエンザよりもはるかに重症化率も致死率も高い、非常に深刻な感染症で、たとえばエボラ出血熱ですとか、非常に短期に死に至り、治療方法がない感染症が出てきた場合には、先ほどおっしゃった私権制限のようなことも含めて、必要かどうか、政府も含めて各党も考えていかなければならないと思います。現状ではやはり各地域の状況に応じての対応が現実的であると考えております。
Q:公約と政策BANKとJファイルの位置づけについて、今回は政策BANKが無いという認識でいいのか。Jファイルは公約ではないという位置づけか。(日本農業新聞)
A:まず、政策BANKは、昨年の衆議院選挙の時の政権公約が今も生き続けております。次の衆議院選挙まで有効でございますので、あえて今回は外しましたが有効でございます。
それから、以前からややこしいと言われていた話なのですが、Jファイルというのは公約とは別でございます。今現在も多様な分野について自民党で議論を行っているということで、必ずしも、皆様に公約としてお約束できる段階に至ってないものも含めて、自民党内のさまざまな議論について示しているものでございます。
(木原事務局長)
Jファイルについては、自民党のホームページからご覧いただくことができて、八百数十項目あると思います。公約に至らないまでも、中長期的な課題も含めて、自民党がこれから取り組んでいくべきかどうか、検討することも含めて、各業界などのご意見ご要望なども含めて書かせていただいているものです。
(木原事務局長)
それでは予定の時間となりました。
以上をもちまして、選挙公約発表記者会見は終了させていただきたく存じます。ご協力どうもありがとうございました。