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総務大臣年頭所感

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平成28年 高市早苗総務大臣 年頭所感


【はじめに】
 
 新春のお慶びを申し上げます。平素より、総務省職員ともどもご指導を賜り、有難うございます。


 一昨年9月に総務大臣に就任致しまして以来、地方経済の好循環を確立する「ローカル・アベノミクス」の実行を掲げ、地域経済の再生と財政健全化の両立、社会全体のICT化の推進、誰もが意欲を持って参画できる社会の実現、安心・安全な社会の構築等の重要課題に取り組んでまいりました。


 我が国の現状を見れば、アベノミクスの諸施策により、経済の好循環が実現しつつあり、デフレ脱却まであと1歩というところまで来ています。


 本年も、総務省の総力を結集して取組を加速し、誰もがもう1歩前へ踏み出すことができる「1億総活躍社会」を創り上げるという強い決意の下、昨年、大筋合意に達したTPPを経済再生・地方創生に結びつけながら、できることは全て行うとの認識を持って、関係府省と連携し、効果的な施策を立案・実施してまいります。



【地方から日本を再生する】


 地方の再生なくして日本の再生はありません。
 日本列島の隅々まで活発な経済活動が行き渡り、1人1人が暮らしの中で景気回復を実感できるように、地方創生に取り組んでまいります。


 このため、平成28年度の地方財政については、地方創生等の重要課題に取り組みつつ、地方自治体が安定的な財政運営を行えるよう、一般財源総額について前年度を0.1兆円上回る61.7兆円程度を確保するとともに、まち・ひと・しごと創生事業費についても、地方自治体が自主性・主体性を最大限発揮して地方創生に取り組むことができるよう、引き続き1兆円を計上してまいります。


 また、地方税が大幅に増収となる中で、地方交付税総額について昨年度とほぼ同程度となる16.7兆円程度を確保しつつ、赤字地方債である臨時財政対策債の発行額を前年度から0.7兆円の大幅減とするなど、一般財源の質を高めてまいります。


 地方税においては、外形標準課税の拡大や、自動車税・軽自動車税における環境性能課税の創設など、安倍内閣の最重要課題であるデフレ脱却と経済再生を地方から後押しする取組を進めるとともに、地方法人課税の偏在是正措置等を進め、全国の各地方自治体が地方創生の推進に取り組む基盤となる地方税財源の充実確保に努めてまいります。


 日本再生のカギは地方経済にあります。


 地方経済の好循環の確立のためには、地方に「しごと」をつくり、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を拡大することが必要です。


 このため、地方自治体がエンジンとなって、地域の総力を挙げて地域の有効需要を掘り起こし、所得と雇用を生み出すことで、地方からのGDPの押し上げを図る「地域経済好循環推進プロジェクト」を推進し、為替変動にも強い地域の経済構造改革を進めてまいります。


 具体的には、創業支援事業計画に基づき、雇用吸収力の大きい地域密着型企業を立ち上げる「ローカル10000プロジェクト」や、バイオマス等の地域資源を活用して地域エネルギー企業を立ち上げる「分散型エネルギーインフラプロジェクト」により、地域で生産性の高い企業を次々と立ち上げてまいります。


 また、「自治体インフラの民間開放」として、公共施設を民間に開放し、民間事業者のビジネス拠点を創出する「公共施設オープン・リノベーション」や、地域産品の海外への販路開拓や対日直接投資を推進する「地域経済グローバル循環創造事業」などを進めてまいります。


 さらに、地方への人の流れを促進するため、昨年開設した「移住・交流情報ガーデン」において、地方自治体や関係府省と連携した取組を進め、「全国移住ナビ」の更なる充実と併せ、移住希望者への情報提供体制を強化してまいります。


 また、地方への人材還流を促進するため、「地域おこし協力隊」の隊員数を平成28年度中に約3000人に拡充することを目指します。


 加えて、「集約とネットワーク化」の考え方に基づき、中核性のある都市が近隣市町村と有機的に連携し地域の活性化を図るため、連携中枢都市圏や定住自立圏を形成し、圏域全体の経済成長の牽引、高次の都市機能の集積、生活機能サービスの確保・向上といった取組を推進します。


 過疎地域など条件不利地域については、基幹集落を中心とした集落ネットワーク圏の形成などにより、集落の維持・活性化を図ってまいります。



【世界最先端のICT大国へ】


 ICTは、あらゆる社会・経済活動や国民生活に不可欠な基盤であるとともに、我が国の未来への投資を加速させ、地方におけるイノベーションの創出を促し、成長と雇用を生み出す鍵となる重要な分野です。


 特に、あらゆる「データ」の活用により新たな価値を生み出す「IoT/ビッグデータ時代」の到来を踏まえ、政府としても我が国の更なる成長を強力にサポートしていく必要があります。


 総務省では、IoT/ビッグデータ時代の新たな情報通信政策や先進的な技術開発・実証を推進するため、昨年12月の情報通信審議会中間答申も踏まえ、実践的なセキュリティ演習の実施拡大に向けた制度整備やIoTテストベッドによるサービス開発支援の予算措置などの取組を迅速に進めてまいります。

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本の世界最高水準のICTを世界に発信できる絶好の機会です。
 大会以降の我が国の持続的成長も見据え、超高精細で臨場感あふれる4K・8Kの普及推進や先進的な研究開発などを通じ、世界最高水準のICT利用環境の実現に向けて取り組みます。


 我が国を訪れる外国人へのおもてなしの観点から、災害情報等の一斉配信を可能とするデジタルサイネージと「言葉の壁」をなくす多言語音声翻訳システムを有機的に組み合わせ、母国語等の個人の属性に応じた情報提供等を可能にするクラウド環境の構築など、「社会全体のICT化」をさらに進めてまいります。


 また、家計における可処分所得の拡大や経済活性化・国民生活の向上を実現する観点から、特に、利用者にとって分かりやすく納得感のある携帯電話の料金・サービスを実現し、スマートフォンを国民の生活インフラとして定着させてまいります。
 具体的には、昨年12月に策定した取組方針に沿って、スマートフォンの料金負担の軽減、端末販売の適正化、MVNOのサービスの多様化を推進するなど、固定・モバイルの競争環境の整備等に取り組むとともに、引き続き、超高速ブロードバンド等の普及を促進してまいります。


 さらに、農業、医療、教育、雇用、行政等、様々な分野へのICTの利活用を一層推進することで地域の産業・魅力を磨き上げ、地域活性化に向けた好循環の芽を育ててまいります。


 そのため、ICTを活用した街づくりに取り組む地方自治体等への支援や、企業や雇用の地方への流れを促進するテレワークセンター・サテライトオフィス等での遠隔勤務(ふるさとテレワーク)の推進、地域においてもICTの恩恵を十分に享受することができるよう、地域住民や訪日外国人にとって平常時・災害時問わず有効な情報収集手段となる無料Wi-Fiの整備をはじめ、高速モバイル、ブロードバンドなど地域の通信・放送環境の整備を推進します。


 拡大する国際市場を獲得するために、昨年11月に設立された株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)と連携しながら、引き続き、我が国ICTの特徴・強みを活かした「質の高いインフラ投資」を推進するとともに、防災ICTや郵便等ICT分野全体での更なるトップセールスに取り組んでまいります。


 また、地域経済の活性化にも資する放送コンテンツの国際展開の促進やテレビ国際放送の充実・強化を通じて、我が国の対外情報発信力を強化するとともに、昨年11月に広島で開催した「情報通信の開発指標を考える国際シンポジウム(WTIS-15)」において、多くの開発途上国の閣僚からICT開発に関する生の声をお伺いしたことも踏まえ、開発支援をはじめICTによる地球規模の課題解決の推進に率先して取り組んでまいります。


 本年5月に我が国が議長国となり開催される「G7伊勢志摩サミット」の関連閣僚会合として、4月29日、30日に、「G7香川・高松情報通信大臣会合」を香川県高松市において開催します。
 IoTやセキュリティ対策など、世界的にも関心が高いテーマについてG7各国の担当大臣と議論を深めるとともに、ICT分野における我が国のリーダーシップを発揮し、首脳会合における議論にも貢献してまいります。



【くらしやすく働きやすい社会を実現する】


 1億総活躍社会に資するため、女性、高齢者、障害をお持ちの方、山間や離島にお住まいの方など、我が国の全ての人が活躍できる可能性を広げるテレワークの普及を更に促進し、多様で柔軟な働き方の実現に向けて、関係省庁と連携して取り組んでまいります。


 地方自治体においては、子育て、教育等の住民に身近な行政について多様な発想が求められており、女性の活躍の場を広げることは、柔軟な働き方改革とともに、経営戦略上の重要課題になっています。
 すべての地方自治体は、「女性活躍推進法」により、本年3月末までに女性活躍のための行動計画を策定し、さらに取組を進めることとされており、総務省としても、本年「女性活躍・人材活用推進室(仮称)」を新設し、各地方自治体の取組を強力に支援する考えです。


 マイナンバー制度については、本年1月1日からマイナンバーの利用及び個人番号カードの交付が開始されます。


 引き続き、詐欺対策を含めたマイナンバー制度の広報、個人番号カードや公的個人認証サービスの利活用推進などに努めてまいります。


 特に個人番号カードのICチップに格納される電子証明書やICチップの空き領域を官民で活用することによって、地域の経済成長につなげる道筋をつけてまいります。


 国民の利便性の向上、行政運営の効率化、公正・公平な社会の実現に資するというマイナンバー制度の基本理念の実現には、多くの住民情報を扱う地方自治体の情報セキュリティ対策を抜本的に強化することが不可欠です。
 総務省としても、都道府県及び市区町村と連携しながらしっかりと取組を推進してまいります。


 郵政事業については、昨年11月、日本郵政、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の3社が上場を果たしましたが、ユニバーサルサービスを引き続き確保するとともに、郵政民営化の成果を国民の皆様に一層実感していただけるよう、新たな事業展開等による企業価値や利用者の利便性の向上を促進してまいります。


 特に、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の限度額の見直しについては、昨年末に出された郵政民営化委員会の所見を踏まえ、関係省庁と連携して、関係政令を改正するべく、速やかに対応してまいります。



【国民の生命・生活を守る】


 安倍内閣の閣僚は、「全員が復興大臣」との意識を共有し、従来の発想にとらわれることなく、東日本大震災被災地の復興に取り組みます。


 復興の歩みを止めないためには、何よりも、膨大な復旧・復興事業を行う被災自治体のマンパワーや財源の確保が重要です。


 被災自治体には、これまでに全国の地方自治体から延べ9万人以上、昨年も約2,200人の職員が派遣され、活躍して下さっています。
 被災から間もなく5年となりますが、被災地の復興事業が本格化する時期を迎えるため、総務省としては、被災自治体のご要望等を踏まえ、改めて全国の地方自治体に職員派遣を要請させていただくほか、任期付職員の採用支援等について努めるなど、被災自治体のマンパワー確保を支援してまいります。


 また、平成28年度以降の復興事業等に係る被災自治体の負担について、平成32年度までの「復興・創生期間」中は、その財源を確保し、引き続き震災復興特別交付税による措置を行ってまいります。


 今後とも、被災自治体の実情を十分にお伺いしながら、被災地の復興に真に必要な復興事業の実施に支障が生じないよう、適切に対処してまいります。


 さらに、過去の災害の教訓を踏まえた消防防災体制の拡充・強化、ICTを活用した復興街づくりやICT基盤の復旧の推進にも取り組んでまいります。


 昨年は、5月の口永良部島噴火や9月の関東・東北豪雨などの災害が発生しました。また、今後は、首都直下地震や南海トラフ地震等の発生が危惧されています。


 このため、今後の大規模災害等に備え、緊急消防援助隊の大幅増隊や、多様化・高度化する消防需要に対応するための常備消防力の充実強化、消防団を中核とした地域防災力の充実強化などに取り組んでまいります。


 中でも、消防団の充実強化については、すべての都道府県知事及び市区町村長に、消防団員確保に向けた一層の取組のほか、消防団員の処遇改善などを要請しております。
 また、日本経済団体連合会等の経済団体に対しても、就職活動時の学生消防団活動への評価や従業員の消防団活動への協力などについて、お願いを致しました。
 今後も、総務省は、消防団の充実に力を注いでまいります。

 近年、サイバー攻撃が巧妙化しており、昨年9月に新たな「サイバーセキュリティ戦略」が閣議決定されたところです。
 総務省では、同戦略も踏まえ、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会やIoT時代も見据えた新たな脅威に対して、実践的サイバー防御演習を強化するなど、我が国のサイバーセキュリティの強化に取り組んでまいります。


 また、災害時における国民への迅速かつ適切な情報提供を確保するため、放送ネットワークの強靱化など、ICT基盤の整備を進めてまいります。



【未来を拓く】


 行政機関等の保有するパーソナルデータについて、昨年、民間部門の個人情報保護法の改正が行われたことも踏まえ、個人情報の保護及び国民の安心をしっかりと確保しながら、適正かつ効果的な活用を図るための制度改正に取り組んでまいります。


 約50年ぶりに抜本的に改正された行政不服審査制度が、本年4月、公正性を高めた新たな制度としてスタートします。
 新設される行政不服審査会などの第三者機関の機能を発揮させ、行政に対する信頼の確保にも努めてまいります。


 行政の評価・監視や行政相談については、若者、高齢者、女性、障害をお持ちの方を含め全ての国民が活躍できる社会の実現につながるよう、国民目線で各府省の業務の実態を調査・把握し、改善を力強く働きかけていきます。


 政策評価については、政策の見直し・改善への一層の活用等を目指し、政策評価審議会の知見も活用しながら、評価の質や実効性の向上を図ってまいります。

 統計については、すべての事業所・企業を対象に我が国の経済の全体像を描き出す「経済センサス-活動調査」及び生活時間の過ごし方を始め、国民生活の日々の姿を見る「社会生活基本調査」を実施します。
 これらの調査で、すべての回答者にオンライン回答を可能とするなど、国の基幹となる各種統計調査を確実に実施し、社会の発展に不可欠な客観的で正確な統計情報の提供を行ってまいります。


 また、オープンデータの高度化を更に進めるとともに、これらの活用により地域の産業構造を見える化した「地域の産業・雇用創造チャート」の整備を進め、地方創生を後押しします。


 公的統計の体系的整備については、「公的統計基本計画」に基づき、取組を続けてまいります。
 特に本年は、4月に統計委員会が内閣府から移管されることになりますので、これを機に、公的統計のより一層の充実に努めてまいります。


 さらに、選挙権年齢の18歳への引下げを踏まえ、若者の政治意識の向上を図るためにも、国や社会の問題を自分たちの問題として考え、捉え、行動していく主権者を育てることが重要です。
 総務省においても、すべての高校生に政治や選挙に関する副教材「私たちが拓く日本の未来」を配布するとともに、若者啓発グループと連携して全国各地でシンポジウム等を開催しており、各選挙管理委員会等の関係機関とも十分連携し、主権者教育の充実に努めることにより、若者の政治意識の向上に取り組んでまいります。



【結びに】

 以上のように、総務省が対応するべき課題は多岐に渡りますが、本年も総務省が持つ政策資源を総動員し、全力で働いてまいります。


 皆様の一層のご理解とご協力をお願い申し上げますとともに、本年が皆様にとって飛躍の年となりますようお祈り申し上げます。

 

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