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「衆参ねじれ」と立法者のストレス

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 先週前半は、「国会同意人事案」の件で、官邸も大変だったと思います。
 日銀政策委員会審議委員や預金保険機構理事長の人事案が、国会に提示される前に報道されてしまったとして、民主党の西岡武夫参議院議運委員長が人事案提示を拒絶していたからです。

 「事前に報道されてしまうと、国会審議が形骸化する」という変な理屈でした。こうなると、総理や官房長官を困らせる為の言いがかりとしか思えません。
 閣法と呼ばれる政府提出法案や予算案など、国会で審議の後に可決されて初めて法律になる多くの案件も、大抵は、政府から国会に提出される前に、その概要は報道されています。国会議員から「報道されたから、国会提出を認めない」などといった声は上りません。

 日銀総裁を決める時も、ひと悶着ありましたが、どうして人事案件だけはこんな事になってしまうのかと、うんざりしていました。
 しかし、参議院では野党が多数派ですから、民主党が承知しない限り、人事も決まりません。理不尽な言いがかりでありましたが、結局は政府側が情報流出を陳謝することになり、民主党は矛を収めました。
 改めて昨夏の参議院選挙で大敗したことの悲哀を噛み締めました。

 先週後半は、「国家公務員制度改革基本法案」でストレス増大。
 現在、私は、この法案が審議された衆議院内閣委員会の理事を務めています。

 平成19年4月24日、安倍内閣が「パッケージとしての公務員制度改革の為の法整備を行う」という閣議決定をしたことから、法制化作業が始まりました。
 安倍内閣退陣後も、引き続き福田内閣に残った渡辺大臣が、必死の思いで各府省や与党と調整を行い、ついに法案化されたのです。安倍内閣で一緒に働いた閣僚として、とても嬉しかったですし、法案の内容にも大いに賛同していました。

 ところが、この法案も、衆議院で原案通り可決したとしても、野党多数の参議院に送られた後に頓挫しかねないことを考えると、衆議院内閣委員会での審議中に、民主党の言い分を飲み込んで修正しなければなりませんでした。
 労働組合の支援を受けている民主党は、「国家公務員の労働基本権拡大」を主張。他の幾つかの項目でも民主党の主張をほぼ「丸呑み」する形で、法案は修正されました。
 
 「国家公務員制度改革そのものが潰されてしまうよりはマシ」と思いつつ、私たち与党側理事も悔しさに耐えましたが、渡辺大臣も内心は悔しい思いが残ったのではないかと思います。

 法案が衆議院を通過した後、テレビの報道番組で、民主党の梁瀬議員のご発言が紹介されていました。
 「自民党は、民主党案を丸呑みした。福田内閣への問責決議案提出を恐れて、延命措置を取ったのではないか」といった主旨で、これを聴いた時には、流石に悔し涙が出ました。
 
 最近は、政府提出法案では、大方がこのパターンです。まずは成立させる為に、民主党の言い分を丸呑みする努力・・。
 
 ところが、議員立法でも、同じ様な現象が見られるようになりました。もともと自民党では、議員立法の国会提出手続きは、とんでもなく厳しいものです。
 法律案を書き上げるまでの苦労も大変なものですが、その後、政調会の部会で審査され、1人でも反対者が居ると、部会でアウト。うまく部会を通っても、その後、政策審議会や党の重鎮が集まる総務会でも全員が賛成して下さらないと、提出は認められません。
 更に、公明党も賛成して下さって始めて、国会への提出が可能になります。

 昨今は、これに加えて「民主党ともよく協議して、賛同を得たものしか提出は認めません」というご指示が・・。
 民主党議員が衆議院に提出される議員立法については、与党側への相談などはしてもらえないのですが、これは、もともと否決覚悟で、とにかく議員立法案を提出した、という実績を作っておられるのだろうと思います。

 私も最近、自分が手がけた議員立法で悔しい思いをしたところですが、先般、オレオレ詐欺対策の議員立法に取組んだ後輩議員も悔しがっていました。
 「自民党では随分前に条文化していたのに、民主党に相談すると、『うちは議論できていないから、もう少し待ってくれ』と言われて、散々待たされた挙句、民主党の言い分を飲まされて、内容には不満が残った。それでも我慢して修正して、提出に漕ぎ着けたら、法整備は民主党の手柄にされていた」とのことでした。

 現在の政治状況から、急いで成立させなければならない閣法については、民主党の主張を丸呑みの「涙の修正」も止むなしかと思います。

 しかし、議員立法については、それぞれの議員が、自らの専門知識を活かし、実態調査と現行制度の課題研究から条文化まで、血のにじむような苦労をして作っています。「これがベストな内容だ」という自負を持って仕上げていますので、民主党との短時間の協議で妥協できない拘りもあります。

 立法府の一員としては、少なくとも与党多数の衆議院には、「ベストな内容」と信じる原案を提出したいものです。
 例え民主党が反対される内容であっても、法案を提出することで、自民党議員としての政治姿勢を示したいという思いもあります。不幸にして野党多数の参議院で修正や否決をされても、その時には諦めがつきます。

 また、議員立法案を衆議院提出前に民主党と協議した場合は、与野党が合意した内容の法案が国会に提出されることになります。衆議院の委員会に付託されても、既に与野党合意済みの法案ですから、委員会では殆ど審議をされないまま、委員長提案という形で可決されてしまいます。
つまり、国民の目に見える場所での審議がなされないで、法律ができてしまうのです。これこそ、西岡氏が言われた「国会審議の形骸化」ではないでしょうか。
 この思いについては、先週の自民党総務会で発言したところです。

 それにしても、参議院選挙で負けたことは、どこまでもコタえるなあ・・・。

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