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護衛艦「あたご」の事故に思うこと

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 2月19日早朝4時7分に護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故が発生してから、今日で4日目です。
 厳寒の海に投げ出されて未だ行方が分からない吉清さん父子のご家族のご心痛を思いますと、今日までこのページに原稿を書くこともためらっていました。何ともやり切れない気持ちです。
 国民の生命を守るべき自衛隊が、2名の遭難者を出したということも残念でなりません。

 事故発生当日の朝に開催された自民党総務会で、防衛省から事故の報告を聴取し、私自身も幾つかの疑問点を質しました。
 その後、本日まで防衛省から追加的な説明を受けていますが、防衛省の説明内容が日を追うごとに変わってきていることや、報告を受けた限りの情報でも不審な点が多いことから、不信感と不安感を拭い去れません。

 第一に、初動の遅さが明らかになるにつれ、「事故発生直後、果たして迅速に十分な救助活動が行われたのだろうか?」という疑問が生じます。
 衝突事故発生から「あたご」による救助開始まで、14分が経過しています。事故発生当日の総務会では衝突1分後に救助活動開始と報告されていましたが、違っていました。
 海上保安庁への連絡は事故発生から16分後です。「あたご」の内火艇2隻のみでの救助活に加えて、一刻も早く救助支援を頼むのが筋ではないかと思います。
 
 第二に、地元行政や被害者のご家族への対応振りについても、余りにも誠意が足りないと感じます。
 防衛省は、地元漁協に3名の自衛官を駐在させて対応していると説明するのですが、悲しみと不安の中におられるご家族への情報提供がなされていないこと、漁業組合がマスコミ対応に苦慮しておられること、地元自治体には自衛官が駐在していないこと等、問題は多いと思います。

 第三に、安全保障上の不安です。
 事故発生当日の総務会でも「小型船での爆弾テロを事前察知できない可能性」について指摘をさせていただいたのですが、長さ12メートルの漁船を衝突直前まで感知できなかったとしたら大問題ですし、感知していたのに適切な回避行動を取れなかったとしたら、これも問題です。
 渡辺大臣も同様の指摘をされていたと知りましたが、防衛省の説明者は事故当日の総務会では私の質問に答えず、2日後にやっと「対空レーダーは最新だが、海上レーダーは他の護衛艦と同じ」「能力的にはレーダーに映るはず」との説明をしました。
 国防を担う最新鋭のイージス艦の弱点が「乗員の気の緩み」であったということになるのでしょうか。海上運航の安全確保は、民間船でも当たり前です。ましてや防衛の任に就く者は、任務中に一刻たりとも油断をすることが許されないはずです。

 また、防衛省から防衛大臣への連絡が事故発生の1時間半後。総理への連絡には2時間近くかかり、午前6時のテレビ報道第一報と同時刻でした。海上保安庁を監督する国交大臣への連絡については不明。事務の官房副長官にのみ連絡し、政務の官房副長官は報道で知ったようでした。
 自民党では「ミサイルを撃たれてもこんなに時間がかかるのか?」と議員たちの怒りの声が上りました。

 「今は、原因究明や改善策の議論よりも、被害者捜索に全力を注ぐべきだろう」というお声があるのも承知しています。

 しかし、今日も海上には多くの船舶が往来しています。テロ等の危機がいつ発生するかも分かりません。少なくとも、自衛艦航路となる海域の海上交通状況の再点検と再発防止策を打つことは急務だと思います。
 また、防衛省のみならず、官邸内や内閣全体の緊急連絡体制の点検も急いでいただきたいと思います。

 吉清さん父子が一刻も早く発見されますように、と祈りつつ・・・。

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