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自民党新憲法草案への思い

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 9月の総選挙で選挙区の変更があった為、特別国会閉会後は、来年度予算関係の作業に加えて、新選挙区での事務所探しやら引越し作業やらに追われました。秋祭りや運動会のシーズンに重なり、スケジュールの合間を縫っての不動産巡りは大変でありました。
 まだ荷解きの時間を取れず、新事務所の私のデスクの周りはダンボールの山ですが、何とかパソコンだけは引っ張り出すことができました。

 自民党は11月に結党50年を迎え、自民党奈良県連も12月に設立50年となりました。
この大きな節目に、自民党の悲願であった自主憲法の草案を世に示せたことは意義深いことだったと思います。

 国会に議席が無かった1年10ヶ月間は、何が悔しいと言っても、党本部で進められていた新憲法草案起草作業に参加できないことでした。3期目までの任期では、衆議院憲法調査会小委員長を務め、自民党憲法調査会でも条文ごとの論点整理に携わっていましたから、肝心な時に現場に居られないことへのもどかしさは、苦痛ですらありました。
 すべり込みセーフで党本部の最終取りまとめに参加し、私見を開陳できたことは、せめてもの救いでした。

 本来でしたら、昭和27年のサンフランシスコ講和条約発効によって日本が主権を回復した際に、GHQの関与を受けて制定された憲法や教育基本法は改正されるべきでした。 
 しかし、長年「改憲論」はタブー視され、ひと昔前には、憲法改正の必要性に触れた閣僚は、憲法99条の「憲法尊重擁護義務」規定に違反するとして、その責任が追及されたものでした。

 そもそも主権者である国民が、「憲法は、国民自ら変えていけるもの」と考えられなかった世の中の空気自体が、「国民主権」を定めた憲法の精神にそぐわなかったのです。

 遅まきながら、「日本人の手による日本の心と言葉を持った憲法草案」を書き上げる作業が為されたことを嬉しく思います。
 自民党が政党として初めて新憲法草案を条文形式で示せたことは画期的なことであり、この草案は、憲法改正論議を進める上で貴重なたたき台になると思います。是非、民主党にも具体的条文を早期にまとめていただき、両党案ワンパッケージで議論を展開することができたら良いなと思います。

 党本部の最終とりまとめの会議で、私が指摘した点が幾つか有りました。
 
 例えば、9条1項を残してしまいましたが、1項の「武力による威嚇、又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という表現は分かりにくく、「侵略やテロにも対応できない」と考えられてきた経緯もあり、表現を明確にすべきだということ。

 また、将来、防衛庁を省にする構想を考えると「自衛軍」より「国防軍」の方が良いのではないかということ。他国との間に「自衛」という文言の解釈と運用の違いが存在することも気になっていました。日本では「自衛権発動3要件」が厳格に解釈されすぎており、米国やドイツの軍隊が行っている在外邦人救出すらできません。
 また、テロや大災害など、国家の緊急事態に自衛隊を活用し、一時的に国民や地方の権利を制限する為の根拠規定を憲法に盛り込むべきであることも主張しました。
具体的に条文を並べた「安全保障条項に関する高市早苗私案」を9条小委員長の福田康夫代議士にも提出致しました。

 残念ながら私の主張は通りませんでしたが、自民党草案では、「国を自ら守る責務」を前文に盛り込み、9条2項に「自衛軍保持」と「文民統制」を明記したことの意義は大きかったと思います。総理を最高指揮者とし、自衛軍の活動に国会の統制をかけた規定を入れ込んだことで、現行憲法よりも安心できる歯止めを示せたと思います。

 この他にも、個人的には下記の点が課題として残りました。
①「国旗・国歌」は憲法事項とするべき。
②「家族間の責務」の欠落。
③「外国人の権利とその限界」規定の欠落。
④国家による「公務死者」追悼責務を規定すべき。
⑤現代日本の現状や実態にそぐわない表現(4条・14条・18条・26条・29条)の残存。
⑥14条が「機会平等」の保障であることを表現したい。
⑦21条「結社・出版の自由」における制限が弱い(現状では、暴力的結社・犯罪目的結社や犯罪誘発ソフト・有害図書の出版が制限できていない)。
⑧教科書検定は検閲には当たらない旨を明記すべき。
⑨2院制の是非と両院の役割分担の議論不足。
⑩国と国民の生命を守るには、「国会の秘密会開催」要件のハードルが高過ぎる。
⑪「政党」の根拠規定を入れたことは評価できるが、概念が狭義解釈に過ぎる。
⑫99条の「憲法尊重擁護義務」を国民にも課すべき。

 しかし、まずは「ベストなもの」より「ベターなもの」への第1歩が大切です。
 12条・13条の書き振りが改善されたこと、「公共の福祉」が「公益及び公の秩序に反しない」という分かり易い表現になったこと、20条の「政教分離」が現実的表現となったこと、25条3項に「犯罪被害者の権利」が規定されたこと、54条1項に「総理の衆議院解散権」の根拠条文が設置されたこと、63条2項で「総理と国務大臣の国会出席義務」が緩和され、重要な国際会議出席への道が開かれたこと、77条が司法制度変更に対応できる条文となったこと、86条に「予算不成立時の必要最小限の支出」規定を設けたこと、90条で「決算における国会の役割」を明確化したこと、91条2で「地方自治における住民の負担分任義務」を新設したこと、91条・94条で地方分権への対応を可能にしたこと、96条の「憲法改正要件」を緩和できたこと、などなど・・嬉しい改善点も多々含まれておりました。

 自民党内では、各条文について最後まで激しい議論が行われましたが、「他党が議論の土俵に上れるもの」という小泉総裁の政治的判断があったと漏れ聞きます。
 この点では、民主党も同じ考え方であるようです。去る10月31日に発表された「民主党憲法提言」には、「多様な憲法論議を踏まえて何らかの改革を行おうとするならば、衆参各院において国会議員の3分の2以上の合意を達成し、かつ国民多数の賛同を得るのでなければならない。政党や国会議員は、自らの意見表明に留まることなく、国会としてのコンセンサスと国民多数の賛同をどう取り付けていくのかに向けて真摯に努力していくことが求められている」と記されていました。

 「現行憲法と現実の間に乖離が存在する」ということについては、衆議院憲法調査会において、自民党から共産党まで全ての政党が一致した点でした。
 国家が直面する重要な課題に解釈と運用のみで対応していては、法の安定性が失われ、国民も安心できません。
 1日も早く新憲法草案を審議する場が国会に設けられ、「国民投票手続き法」が制定され、活発な議論が展開できるよう、期待しています。

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