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「一寸先は闇」安倍総理退陣表明と自民党総裁選

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 政界では「一寸先は闇」という言葉をよく耳にしますが、この10日間ほど、永田町でこの言葉が多用されたことはなかったと思います。

 9月12日の14:00。私は、安倍総理の退陣表明記者会見を中継するテレビ画面を茫然としながら観ていました。

 この時点で安倍総理が説明された退陣理由は、「日本がテロとの戦いを続行できる政治環境を作る為に自分が身を引く」というという趣旨のものでしたから、この一点で退陣されるということについては、どうにも承服できない気持ちでした。
 総理の職を賭してまでテロ対策をやり抜くご決意があるなら、例え「数の横暴だ」「強硬だ」という世論の批判を浴びても、衆議院の3分の2の与党議席を活用して自衛隊派遣の根拠となる法律を通せばよいわけです。
 米国の同時多発テロでは、24名の日本人も犠牲者になっています。テロ撲滅に向けての国際社会の取組みに参加することは、決して米国の為ではなく、日本の為にも国際社会の為にも重要なことです。難航が予想される国会審議を通じて堂々とその意義を訴えれば、多くの国民は正しく理解して下さったと思います。

 そんな思いから、総理の記者会見を聞いた時点では、ショックとともに総理のご判断に対して憤慨する気持ちが強かったのです。
 また、先月まで安倍内閣の閣僚であった立場からは、国民の皆様に申し訳ない気持ちで胸がつぶれそうでした。

 そして、同じ12日の夕方、官房長官が初めて総理の健康状態に言及した記者会見をされました。その後、多方面から総理の病状を伺い、とても長時間の国会審議などの激務に耐え得る状態ではないことを知り、また大きなショックを受けました。

 安倍総理のお疲れが過ぎている状態は、今年の5月頃から気になっていたからです。
 主に科学技術政策担当大臣としての仕事でしたが、総理が出席される会議についての事前打ち合わせの為に官邸に伺いますと、こちらの説明が殆ど耳に入っておられないような表情でボーッとされたり、時には疲れ切った様子で固く目をつぶっておられたり・・ということが度々ありました(それでも肝心なポイントはしっかりと頭に入れて会議に臨んでおられましたが)。
 できるだけ総理の体に無理をかけないように、私自身、よっぽど重要な案件以外は電話や秘書官とのやり取りで済ますように気を使ったつもりでしたが、それでも毎日の総理日程は相当に過密だったようです。
 もっと総理周辺で、総理の体調を考慮しながら無理のない日程管理ができなかったものかと、残念に思いました。
 しかし、政治家は、健康問題が噂されるだけでも政治生命に関わるとされることから、人目に触れる病院には行きたがりませんし、よっぽど悪い状態になるまでは秘書や家族にも話さない場合が多いので、総理の秘書官にも正確な判断ができなかった状況だったのかもしれません(ちなみに私が2月に極度の睡眠不足などから倒れてしまった時にも、選挙区で「ガン説」「引退説」を流され、かなり情けない思いをしました)。
 今は、安倍総理の1日も早いご健康回復を切にお祈りしたいと思います。
 
 総理退陣表明を受けて、先週末から自民党は総裁選挙に突入。明後日は投票日です。

 普段は慎重でポスト取りへの執着がないとされる福田康夫代議士が、周囲に請われて立候補を決断された過程にも、様々な「一寸先は闇」現象がありました。
 特に、私が所属する清和政策研究会には、「安倍政権の次は、麻生さんを総理にする為に応援しよう」という暗黙の了解が在ったように感じていたのですが、それも、麻生さんが記者会見で「9月10日の時点で、安倍総理から辞意を打ち明けられていた」ことを明らかにされたことで、瞬時に流れが変わりました。
 「えっ? 安倍総理からそんな重要なことを打ち明けられた後に、太郎会(麻生氏を総理にする会)を開いてお酒を飲んで盛り上がっていたの?」「以前から予定されていた会合でも、そんな緊急事態ならキャンセルしますよね」「安倍総理を守ってくれるどころか、他の国会議員が安倍総理の辞意を知らないうちから後釜狙いに動いたわけ?」といった話が飛び交い、何か感情的なこじれが大きくなっていったように思います。

 色々なことが次々に起こりましたが、それでも、2人の総裁候補は堂々と政策を訴え、それぞれに国民が安心できる社会をつくる為に頑張る決意を伝えて下さっています。
 来週には発足する新しい内閣のメンバーの活躍を祈りたいと思います。

 最後に、我が党の総裁選挙のために、開会中の臨時国会に10日以上もの空白を作ってしまったことについて、国民の皆様や野党の皆様にお詫びを申し上げます。国会審議再開後は、皆で力を合わせて精一杯働き、この時間を取り戻してまいります。
 また、昨秋の総裁選挙や首班指名選挙で安倍総理の政策を支持し1票を投じた者として、安倍内閣で働いた者として、今般の事態について皆様にお詫びを申し上げます。

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