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「立つ鳥」のこだわり

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 怒涛のような1週間でした。

 

 丁度、1週間前の9月14日(月)は、自民党総裁選挙の投票日で、菅義偉・新総裁が誕生しました。

 

 翌日の15日(火)は、平常通り、朝から安倍内閣としての閣議、閣僚懇、大臣記者会見と続き、午後からは、上京された地方公共団体の首長との面談を経て、私が特に力を入れていたNHK改革に係る「公共放送の在り方に関する検討分科会」にも通常通りに出席。

 

 翌日に発足する菅内閣の閣僚予定者名簿が明らかになり始めたのは、15日の夕方頃からですが、既に前日14日までには、自分が総務大臣を退任することは十分に想定できていましたので、対外的に「通常通り」を保つことが大変な日でもありました。

 

 16日(水)朝は、安倍内閣として最後の臨時閣議が開かれて閣僚の辞表の取り纏め、総務省に戻って、総務大臣として最後の記者会見。

 午後の衆議院本会議で、菅義偉・自民党総裁が、内閣総理大臣に選出されました。同日の夜には、新内閣が発足しました。

 

 組閣の日、新大臣は、午後から、順次、官邸に呼び込まれて、新総理から正式に役職名などを告げられ、その後、スーツから正装に着替えて官邸に集合。

 官邸内では、認証式に際して天皇陛下の御前での作法を収録した映像を何度も観た上で、その後、皇居に上がって認証式に臨み、官邸に戻って初閣議、集合写真撮影、官邸での記者会見(正装ではなくスーツ姿で記者会見をしたい人は、会見直前に着替え)、各役所への初登庁、各役所の記者クラブでの記者会見…と、夜中まで息をつく暇もありません。

 

 組閣翌日の17日(木)は、新任大臣も退任大臣も、結構、多用です。

 新旧大臣とも、皇居や各宮家に上がり(計7箇所)、「就任御挨拶」や「退任御挨拶」の記帳をし、新旧大臣事務引継ぎ式、新旧大臣交代式に臨みます。

 

 私は、総務大臣を退任することとなりましたが、これまでに様々な役職を退く時に、最も気を遣い、タイミングを考えてきたのが、使用していた部屋の私物の撤収作業と掃除です。

 

 あまり早めにダンボール箱を運び込んで私物をパッキングし始めると、未だ交代を知らない職員の士気が下がり、来客から人事情報が洩れる可能性があります。

 でも、組閣当日まで撤収作業をしないでいると、十分な掃除時間が確保できなくなります。

 

 個人的にこだわり続けてきたことは、「立つ鳥 跡を濁さず」です。

 この言葉は、広辞苑によると「立ち去る時は、跡を見苦しくないようによく始末するべきである」又は、「退き際はいさぎよくあるべきである」と解説されています。

 私の場合は、前者の意味で掃除にこだわってきました。

 

 次に部屋を使う方が、気持ちよく使えるように、すぐに引き出しや棚に私物や資料を入れられるように、一刻も早く仕事に着手していただけるようにと願いを込めて、とことん掃除をします。

 デスクの引き出しの中、沢山ある棚の中、ロッカーの中、洗面所の棚の中、トイレなど、厚手の除菌ウェットティッシュ数箱分を使用し、徹底的に2度拭きの掃除をします。

 

 これまでも、平成26年9月に自民党の政調会長室を去る時、平成29年8月に総務大臣室を去る時(前任時)、令和元年9月に衆議院の議院運営委員長室を去る時にも、それぞれ、徹底的な拭き掃除をしました。

 

 過去に、自分が新しい役職に就任した日に、入った部屋で机の引き出しを開けると、机の中に紙ゴミやクリップが散らかっていたり、棚の中が埃だらけたったりして、掃除から始めなければならなかったことが殆どだったからです。

 就任日には、すぐに着手したい仕事で頭が一杯なのに、時間が惜しくてなりませんでした。

 

 今回は、15日(火)午後の地方公共団体の首長との面談が終わるまでは、短い空き時間を見付けては、洗面所や机の引き出しやロッカーなど、大臣室の見えない場所の拭き掃除を行い、机やロッカーの中身を入れた段ボール箱は隠しておきました。

 「公共放送の在り方に関する検討分科会」出席後に、一挙に見える場所の私物や資料を箱詰めし、夜間に自分の秘書達に運び出してもらい、棚やトイレの拭き掃除。

 

 16日(水)組閣当日の臨時閣議、記者会見後には、総務省幹部や大臣室職員への挨拶を済ませ、首班指名の本会議に出席し、最後の念入り拭き掃除をしてから、総務大臣室を去りました。

 「変な奴」と思われるかもしれませんが、私のこだわりです。

 

 大失敗もありました。

 

 前回、平成26年9月から平成29年8月まで、安倍内閣で総務大臣を務めた時には、最初の就任や内閣改造で、連続4回の総務大臣任命を受けました。

 

 そのうちの1回で、やらかしてしまいました。

 内閣改造前日までに、机の中など見えないところの拭き掃除を終え、改造日の朝には、荷物の段ボール箱詰めや拭き掃除を行う為に、上下ジャージ姿で役所に向かおうとしていました。

 テレビをつけたままジャージ姿でお化粧をしていたら、改造内閣の予想顔ぶれに私の写真と名前が映っています。

 

 平成26年9月の最初の総務大臣就任時には、当日の朝に安倍総理から電話がかかってきて、皇居に上がる為のロングドレスを用意するのに大変な思いをしたので、安倍総理に「せめて、女性の大臣就任予定者には、前日までにお知らせ下さると助かるのですが」と、お願いをしていました。

 

 そのような経緯もあり、その日は、「内閣改造日の朝になっても、安倍総理から電話も無いのだから、テレビの誤報だろう」と思いつつ、念の為、当時の菅官房長官に電話をかけて、「私は退任で間違いありませんよね?」と確認してみました。

 電話の向こうで、菅官房長官が「何を言ってるの。高市さんは続投だよ。総理から聞いてないの?」と呆れておられます。

 

 あのままジャージ姿で大臣室の掃除をしていたら、官邸への呼び込みにも、皇居での認証式にも間に合わなかったという、恐怖の経験でした。

 安倍総理によると、私には伝えたつもりで、電話をかけ忘れていたということでした。

 その時は、私と同様に忘れられていた男性閣僚1名が居たことも判明。今となっては笑い話ですが、組閣日は、新任閣僚も退任閣僚も心身ともにハードです。

 

 総務大臣室の掃除は完璧に成し遂げましたが、大臣室から運んだダンボール箱の中身を片付け、長く使っていなかった議員会館の事務所を掃除し、宿舎で読み込んでいた総務省の大量の資料を溶解処分ゴミに出し、宿舎に設置された政府の非常用無線電話装置などの撤収をしていただくまで、当分の間、体力勝負の掃除の日々が続きそうです。

 

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